PMS

PMS(月経前症候群)とは

月経が始まる数日前になると、お腹が張ったり痛くなったりする、乳房が張って痛む、イライラするなどの症状が起こりますが、月経が始まると、それらの症状が軽くなり、消えてしまうことがあります。
その状態が続いている場合、月経前症候群(PMS)の可能性があります。
症状が重い場合は、学業や仕事に支障がでることがあります。
PMSでは実に様々な症状が起こりますので、何か思い当たることがある場合は、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

PMSの症状

PMSには身体的症状と精神的症状を合わせて200以上の症状があると言われています。PMSの中でも特に精神面での不調が著しい場合をPMDD(月経前不快気分障害)と呼びます。
下記の代表的な症状の他に、月経開始前に起こる症状でお困りのことがありましたら、ご相談ください。

身体的症状

  • 下腹部の張り、痛み
  • 乳房の張り、痛み
  • 常に眠い、眠れないといった睡眠障害
  • 腰痛
  • 頭痛
  • 疲労感
  • 肌荒れ、ニキビなどの肌トラブル
  • 体重増加
  • 手足のむくみ

精神的症状

  • イライラしたり怒りっぽくなったりする
  • 情緒が不安定
  • 落ち着きが無くなる
  • 周囲の人にあたってしまう
  • 憂鬱な気分になる
  • ぼーっとして集中力が無くなる

PMSの診断基準

まずは、似たような症状があるうつ病などの精神疾患や月経前不快気分障害(PMDD)では無いことの除外診断を行います。その上で、米国産婦人科学会の診断基準によると以下の項目に当てはまるとPMSと診断されます。
日本でも概ねこのような診断基準に基づいて判断します。

  • その時点までの3回の月経周期で、月経の前5日間に次のような身体的症状や精神的症状のうち、少なくとも1つ以上が存在する

身体的症状

精神的症状

  • 身体的症状が月経開始後4日目までに軽快し、13日目まで再発しない
  • これらの症状が、薬物療法やホルモン内服、薬物やアルコールの使用が無くても現われる
  • これらの症状が、次の2周期月経前にも再現される
  • これらの症状によって、社会的、経済的な行動や能力にはっきりとした障害が起きている

PMSの原因

PMSが起こる原因は、まだはっきりと解明されていないのですが、発症のメカニズムの要素として有力なものは下記となります。

プロゲステロン
(黄体ホルモン)の影響

排卵から次の月経が始まるまではプロゲステロンというホルモンが分泌されます。これは黄体ホルモンともいわれる女性ホルモンの一種で、受精卵を着床しやすく、また妊娠を維持するような働きをしています。
このホルモンが分泌されている時期は基礎体温から言えば、高温期で、体内に水分を維持するような働きを持ちます。
ただ、水分が排出されにくくなることで、手足のむくみ、腹部の膨満感といった症状の他、脳で水分が増えると頭痛、乳房で増えると張りや痛みなどを起こします。 また、全身がむくむことによって、だるさや倦怠感などが現れることもあります。

セロトニン(脳内物質)の
低下

排卵があると、卵胞の成長を促すため卵胞ホルモンとも言われるエストロゲンの分泌が減ってきます。
エストロゲンが減ると、脳内物質の一種で「幸せホルモン」とも言われるセロトニンの分泌も減少します。
セロトニンが不足すると、抑うつ症状やイライラといった精神症状が発症しやすくなります。

PMSの治療

ホルモン療法

排卵が起こり女性ホルモンの大きな変動があることがそもそもの原因と考えられるので、排卵を止め女性ホルモンの変動をなくすことで症状が軽快します。排卵を止める低用量ピルを使用します。

漢方薬療法

漢方には、昔から婦人科の症状に使用されてきた実績のある漢方薬が幾つもあります。
PMSの場合は多彩な症状が特徴ですので、それぞれの症状に合わせた漢方薬を処方することになります。
ホルモン療法と比べて副作用が少ない治療ですので、当院でもお勧めしております。ご希望の方は、まずは医師にご相談ください。

SSRI(抗うつ剤)

精神的な症状が中心の場合には、抗うつ剤として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という種類の薬を処方します。
セロトニンが減少することを防止し、気分の落ち込みなどに効果があります。
うつ病とは異なりますので、月経前の症状の出る時だけ服用し、月経が始まった時点で服用をストップします。
次の月経開始前に症状が出たらまた服用するというサイクルで症状をコントロールしていきます。

PMSではない場合

PMSとよく似た症状を起こす疾患が幾つかあります。同じ治療が可能な場合もありますが、異なる専門治療が必要な疾患もありますので、しっかりとした鑑別が必要です。

症状が月経周期に
当てはまらない

PMSは日本語名に「月経前」とついているように、あくまで次の月経の5日前後前に症状が現れ、月経が始まると症状は軽減したり消えていったりします。
もし、月経が始まっても症状が続く、またはずっとそうした症状がある場合は、PMSではない別の疾患がある可能性が高いため、検査を受けて頂くことになります。また精神症状などの場合は専門の医療機関をご紹介しています。

月経周期に当てはまるが、
別の病気である

月経困難症

月経が始まると同時に月経痛がひどく、悪心や嘔吐、下痢などを起こしてしまい、重い場合は社会的活動が出来なくなってしまうような症状がある場合、月経困難症が考えられます。あくまで月経期間中の症状で、PMSとは異なり、治療法も若干違います。

PMDD(月経前気分不快障害)

PMSと似て月経前に症状が起こり、月経開始と共に症状が治まっていくのですが、身体的な症状がほとんど無く、精神的症状だけが強いケースはPMSと区別して月経前気分不快障害(PMDD)と診断されます。
うつ病だと思い、精神科で抗うつ剤などを処方される場合もありますが、症状が月経周期と連動している場合は一度婦人科での受診をお勧めします。

更年期障害

更年期は、閉経の前後5年程度にホルモンの変化によって様々な症状が現われることがあります。日本人女性の場合、およそ45~55歳の間と言われます。
これを更年期障害と言い、この症状のなかにPMSと同じような症状も含まれています。
ただし原因も異なりますので、しっかりと区別する必要があります。

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